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傷のあわい|宮地尚子
¥880
『傷を愛せるか』の著者の原点となるエスノグラフィ 異国で、そのときなしえる最良の力で人生にぶつかり、傷つきに揺れる日本人。その語りに耳を傾け、生きることを同じ目線で考えた記録。 米国で何者かになろうと海を越えた青年、夫の海外転勤に合わせて渡米した女性、人生に詰んで海外へ拠点を移した男性──。異国の地で、不安定さや傷つきに揺れながらも、そのとき成しえる最良の力で人生にぶつかっていく。その語りに、若き日の著者が耳を傾け、生きるということを同じ目線で考えた記録。 解説 奈倉有里 ■宮地 尚子(みやじ・なおこ) 一橋大学大学院社会学研究科特任教授。専門は文化精神医学・医療人類学・トラウマとジェンダー。精神科の医師として臨床をおこないつつ、研究をつづけている。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。主な著書に『傷を愛せるか 増補新版』(ちくま文庫)、『トラウマ』(岩波新書)、『ははがうまれる』(福音館書店)、『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房)、『傷つきのこころ学』(NHK出版)がある。
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ケアの倫理と平和の構想 戦争に抗する 増補版|岡野八代
¥1,650
「正戦」「自衛」の名の下で人間の身体を破壊する戦争の本質を明らかにし、平和の構想を紡ぎだす。三牧聖子との対談を収録。 「戦後」も続く暴力の連鎖のなかで、フェミニズムは人間の「傷つけられやすさ」を見据え、ケアの視点から平和を希求してきた。「慰安婦」問題、9.11、ガザ……。「正戦」「自衛」の名の下で人間の身体を破壊する戦争の本質を明らかにし、平和の構想を紡ぎだす。対談「戦争に抗する思想」(岡野八代×三牧聖子)を収録。 ■岡野八代 1967年三重県生まれ.早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了.博士(政治学).現在,同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授.専攻は政治思想,フェミニズム理論.著書に,『シティズンシップの政治学―国民・国家主義批判増補版』(白澤社),『フェミニズムの政治学―ケアの倫理をグローバル社会へ』(みすず書房),『ケアの倫理―フェミニズムの政治思想』(岩波新書)など,訳書に,エヴァ・F. キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(共監訳,白澤社),アイリス・M. ヤング『正義への責任』(共訳,岩波現代文庫),ジョアン・C. トロント『ケアリング・デモクラシー―市場,平等,正義』(監訳,勁草書房)などがある。
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利他・ケア・傷の倫理学 ー「私」を生き直すための哲学|近内悠太
¥1,980
利他とは何か、 ケアの本質とは何かについての哲学論考 人と出会い直し、つながりを結び直すために 「大切にしているもの」をめぐる哲学的考察 「訂正可能性の哲学」がケアの哲学だったことを、本書を読んで知った。 ケアとは、あらゆる関係のたえざる訂正のことなのだ。 ──東浩紀 「僕たちは、ケア抜きには生きていけなくなった種である」 多様性の時代となり、大切にしているものが一人ひとりズレる社会で、善意を空転させることもなく、人を傷つけることもなく、生きていくにはどうしたらよいのか? 人と出会い直し、歩み直し、つながりを結び直すための、利他とは何か、ケアの本質とは何かについての哲学的考察。 進化生物学、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」、スラヴォイ・ジジェクの哲学、宇沢弘文の社会的費用論、さらには遠藤周作、深沢七郎、サン=テグジュペリ、村上春樹などの文学作品をもとに考察する、書きおろしケア論。 『楢山節考』はセルフケアの物語だった! 「大切なものはどこにあるのか? と問えば、その人の心の中あるいは記憶の中という、外部の人間からはアクセスできない「箱」の中に入っている、というのが僕らの常識的描像と言えるでしょう。/ですが、これは本当なのでしょうか?/むしろ、僕らが素朴に抱いている「心という描像」あるいは「心のイメージ」のほうが間違っているという可能性は?/この本では哲学者ウィトゲンシュタインが提示した議論、比喩、アナロジーを援用してその方向性を語っていきます。」 (まえがきより) ■近内悠太(ちかうち・ゆうた) 教育者、哲学研究者。統合型学習塾「知窓学舎」講師。著書『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)で第29回山本七平賞・奨励賞を受賞。
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アンチ・アンチエイジングの思想 ボーヴォワール『老い』を読む|上野千鶴子
¥2,970
老いには誰も抗えない。 それなのに、私たちはなぜ老いを恐れるのだろう。平均寿命が延び、老人としての生が長くなったことで、誰もが老いに直面すると同時に不安も高まっている。 自分が老いたことを認めたくないのは、社会が老いを認めないからだ。それを惨めにしているのは文明のほうなのだ。「老いは文明のスキャンダルである」――この言葉に導かれて、ボーヴォワール『老い』への探究がはじまる。 さらに日本の介護の現場を考察し、ボーヴォワールのみた景色の先へと進む。認知症への恐怖、ピンピンコロリという理想、安楽死という死の権利。その裏側にある老いへの否定から見えてくるのは、弱いまま尊厳をもって生ききるための思想がぜひとも必要だということだ。 ひとが最後の最後まで人間らしく生きるには、徹底的な社会の変革が必要なのだ。老いて弱くなることを否定する「アンチエイジング」にアンチをとなえ、老い衰え、自立を失った人間が生きる社会を構想する。
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障害のある10代のための困りごと解決ハンドブック| 野口晃菜・松波めぐみ
¥2,200
障害のある10 代の困りごとと、その解決方法を「障害の社会モデル」の観点からわかりやすく答えた、初めての書籍。 障害に由来する問題を本人に解決させるのではなく、「合理的配慮」の提供や、福祉サービスの利用によって、あなたがあなたらしく生きる方法があることを伝えます。 セクシュアリティに関する悩みや、恋人とのセックスといった、従来の福祉書では扱われなかったことがらも取り上げました。障害のある先輩たちのリアルな経験も多数紹介し、役に立つ相談先リストも掲載しています。さまざまな障害種にも対応! 学校・友だち・恋愛・家族・進路進学・はたらくことなど8つのテーマに対応 総ルビ、全ページにイラストつき! ◾️野口晃菜 さまざまなバリアがないインクルーシブな社会をつくるために活動中。特にインクルーシブな学校づくりが専門。 共著『LDが見つけたこんな勉強法」(合同出版)、「差別のない社会をつくるインクルーシブ教育」(学事出版)など。 ◾️松波めぐみ 会社員だった20 代の頃、自立生活をしている人と友達になったのが原点。専門は障害学と人権教育。現在は大学で合理的配慮を行うための仕事をしている。 著書『「社会モデルで考える」ためのレッスン』(生活書院)。
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養生する言葉|岩川ありさ
¥1,760
この世界が、あなたにとって、ちょっとでも生きやすくなりますように。 自分自身を優しくいたわる「ヒント」がつまったエッセイ集。 『物語とトラウマ』を上梓したトラウマの研究者でもあり、現代日本文学の研究者でもある岩川ありささんが、自身のトラウマについて見つめるところから、出会ってきた言葉や物語がいかに自分の生を支えてくれたのか、記録するように書いていったエッセイ集。 大江健三郎、ハン・ガン、津村記久子、文月悠光、『ブルーロック』、『君と宇宙を歩くために』……文学研究者が出会った、人生に寄り添ってくれる「言葉」と「物語」。 ”大きな言葉、強い言葉ではなく、自分をねぎらい、心のエネルギーを増やしてくれる言葉が人生には必要だ。 そこから力をえて生きられるようなちょこんと置かれた言葉。それを私は養生する言葉と呼んでみたい。生きるためのヒントとなる言葉、生きることを養ってくれる言葉は、きっとあなたの背中をささえてくれるだろう。 そして、養生とはいつもこの社会の中で行うものなのだということについてもこの本では話してみたい。”
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きもち保管室|エッセイ集○○×
¥1,200
SOLD OUT
その気持ち、預けてみませんか。 同じテーマで書かれた文章を集めてまとめた冊子『〇〇×(まるまるばつ)』。第三弾となる今回のテーマは「言わないでいること」。 ✳︎ 「誰かに話したい」と「誰にも言いたくない」は相反するように思えて実は近いところにある気持ちなのではないか、と考えることがありました。 深夜のゆっくり進むタイムライン。誰も見ていないなら言えるかも、と心が軽くなる瞬間。書き出すだけならメモでいいはずなのにSNSなど「人が見えるところ」に書いてしまうのは、「それでも誰かに見てほしいから」なのかなと感じています。 心に仕舞っているものを文章にすると、その文章に気持ちも預けておける気がしています。 そして、残しておいているから大丈夫だと思うのか、その出来事への執着が薄まる気もします。無理に取り出す必要は確かにありません。でも、もし抱えきれなくなったとき、抱えきれるときでも、一時的にそうやって気持ちを体から出せたなら、思い悩んでしまう夜が減るのではないか、そういう本は作れないかと思い、本の制作に取り掛かりました。 取り出したら置いておく場所が必要でそこは安心して預けられて大切に保管しておける場所でなければならない、そして預けておくだけではなく必要なときは取りに来れる場所にしたいという想いから、「きもち保管室」と名付けました。 また、本全体で文章と名前の紐づけを明確にしないようにしてあります。(寄稿者の「文章に責任を持ちたい」という想いもあり、本の中では必ず分かる形を、と章の最後でまとめてわかるようにしています)。 話す側も聴く側も、傷ついたり、背負ったりする必要がないように。ネガティブなシーンで聞くことが増えてしまった「匿名」を、ポジティブな形で使うことができないかと考えました。 読み手にとっても、旅先のバーで話を聴くような、飛行機で隣になった相手と着陸まで話すような、抱え込む必要はなく、でも感情の動く本になったら、と思っています。 ===== 企画・発案 かんの より 購入いただけた方全員に特典でステッカーをプレゼント(無くなり次第終了とさせていただきます)! 寄稿者:柏木友椰 かわえみ かんの すなば 中辻作太朗 七緒 生湯葉シホ Podzol 丸太洋渡 輪湖 ほか 企画・発行 かんの ※オリジナルステッカー付き
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らせんの日々 ― 作家、福祉に出会う|安達茉莉子 ぼくみん出版会
¥1,980
タイトルの『らせん』がとても印象的です。 この言葉は、数十年にわたり福祉の道に従事してきたひとりの職員が書いた広報誌の文章から引用されています。 ”「福祉に従事することは、多かれ少なかれ、“らせん”のようなものである」 同じところをぐるぐると回っていて、自分が前に進んでいるのか後ろに進んでいるのかもわからない。答えのない日々。だけど、一歩一歩でも少しずつ上昇していく。そんな言葉を遺した人がいて、ずっと覚えていた人がいる。” 数十年に渡り福祉の道に従事してきたひとりの職員が、福祉と「支援」について書き残した一文。 障害者支援や高齢者福祉など多様な分野の事業所を運営する社会福祉法人、南山城学園。そこで著者が出会ったのは、この社会がより生きやすいものになっていくためのヒントに溢れた、“最先端”の風景でした。 素朴だが、やさしく、やわらかい空間。 丁寧かつ創意工夫に満ちた、細やかな支援。 データをとり、その分析によって得られたエビデンスに基づいた取り組み。 日々の実践をふりかえって研究し、言葉にすることを重視する活動。 答えのない、複雑な事柄について話し合うことができる空気。 利用者の生きがいに寄り添い、そのひとの人生に思いを巡らせることのできる想像力。 支援しつづけるために支え合う、職員どうしのフラットな関係性。 ーーそれらの根底に流れ、職員全体に浸透する「人を大事にする」という意識。 自分を取り巻く暮らしを少しずつ変えていくことで幸福へと近づいていく自らの軌跡を描いたベストセラー『私の生活改善運動 THIS IS MY LFE』。 その著者・安達茉莉子が次に描くのは、誰もが人間らしく生きることができる世界を目指す「福祉」の現場。より良く生きることを目指した「生活改善運動」から、自然とケアの世界に足を踏み入れる事になったのだと思います。そのつながりは、偶然のようで決して偶然ではないと感じます。 上から見れば、堂々めぐりのように見え、横から眺めれば後退しているようにも見える。でも、踏み出した一歩によって、わずかに、高みへと上がっている。そんな“らせん”のような日々を、福祉の現場ではたらく職員の語りを通して描いたエッセイ。 一人ひとりのケアの実践を丹念に汲み取り、安心して自分らしく生きられる社会へのヒントを見出し、本という形にしたこのプロジェクトの見事さ。ぜひ、本を読んで味わっていただきたいです。 B6変形 224ページ ■安達茉莉子 作家・文筆家。大分県日田市出身。東京外国語大学英語専攻卒業、サセックス大学開発学研究所開発学修士課程修了。 政府機関での勤務、限界集落での生活、英国大学院留学などを経て、言葉と絵による表現の世界へ。自己の解放、記憶、 暮らし、旅、セルフケアなど、「生」をテーマにした執筆を続ける。このほか、詩作、朗読会、トークイベント、講座など幅広く活動している。
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自分にやさしくする生き方| 伊藤絵美 著
¥990
『セルフケアの道具箱』などこれまでもセルフケアを推奨してきた著者の新刊がちくまプリマー新書から出ました。 セルフケア「しなければ」と思っていませんか? セルフケアは「一人で頑張る」ものではありません。本書と一緒に、心の根っこにあるストレスに気づき、解消して、自分にやさしくする技術を身につけましょう。 こんな人におすすめ ・寝る前も勉強や仕事が気になってリラックスできない ・休むと自分を甘やかしているようで罪悪感がある ・人に迷惑をかけるのが怖くてSOSを出せない ・みんなはもっと頑張っているのに…と落ち込む ――― 【著者からのメッセージ(本書より)】 「自分にやさしくする」ことは、一種の「スキル」すなわち「技術」であると気軽に考えてもらいたいのです。スキルは練習によって身につけることができます。 「自転車に乗れなければならない」と思っていたからといって自転車に乗れるようになるわけではありません。そんな思いがあってもなくても、自転車に乗る練習さえすれば、いつか必ず自転車に乗れるようになります。 それと同様に、みなさんにも、価値観や信念といった深い思いはさておき、これから紹介するさまざまなワークを実践することで、「自分にやさしくする」スキルが身につき、気づいたら「自分にやさしくする」ことが習慣になっていた、という流れに乗っていただきたいと思います。 ―――
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能力主義をケアでほぐす|竹端寛
¥1,870
社会学者である竹端寛さん、仕事人間だったという竹端さんは娘の誕生によって「家族・子育て」というケアの領域にどっぷりと向き合い始めます。それ以来、無意識にもブログなどで綴ってきたケア論や能力主義批判をまとめた一冊です。 能力主義のしがらみからいかに抜け出すか? ケアから考える 家族、学校、社会、制度、そして資本主義 長らく成果主義と自己責任論の呪縛に苦しんできた著者が、自らの子育て体験を経てケアに目覚めた。その過程で読んできた本、出会ってきた人々とのエピソードで語る、ケア中心社会への見取り図となる思索エッセイ。 能力は個人に備わったものではなく、他者との関係性のなかで立ち上がるもの。能力主義の軋轢に対しては、ケアの精神でときほぐす! “僕自身が「仕事中毒」だったときには、生産性至上主義の塊で、業績を出すことに強迫観念的に縛られていた。そのことに自覚的になったのも、家事育児に明け暮れた一日が終わって、「今日は何も出来ていない!」とため息をついている自分に気づいた時期からでした。そこから、自分を解放するためにも、少しずつ「能力主義批判」がはじまったのでした。”(「はじめに」より) ”竹端さんは正直な人である。 正直さは研究者にとって必須の知的資質である。 本書を読むと、正直さが知的離陸を可能にすることがわかる。” ──帯文・内田樹