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私の小さな日本文学|チェ・スミン編|夏葉社
¥1,760
ソウルでひとり出版社「夜明けの猫」と、書店「セゴ書林」を営むチェ・スミンさんは、2010年に明治大学に入学しました。 そこで日本の近代文学のおもしろさを知り、韓国に戻ってから、「あまり知られていない作家の作品を掘り出して翻訳することを決意し」、ひとり出版社を立ち上げます。彼女は、芥川龍之介や萩原朔太郎といったメジャーな作家だけでなく、伊藤野枝、片山廣子、豊島与志雄、牧野信一、田中貢太郎、渡辺温らの掌編小説を韓国語に翻訳し、印刷して、販売しはじめました。 そのユニークな活動は韓国のリトルプレス周辺ではよく知られ、日本でも、岡山市で開催されている「おかやま文芸小学校」に毎年招かれ、自身で製作した冊子や文学グッズを販売しています。 夏葉社もまた、「おかやま文芸小学校」に毎年出店し、そこで彼女の活動を知りました。16編の近代文学の掌篇を集めた瀟洒な本です。装画は恩地孝四郎、長いあとがきはチェ・スミンが日本語で書いています。これまでにない、あたらしい日本近代文学入門です。 (版元より) ◾️チェ・スミン 1990年生まれ、翻訳家、作家。感情を込めて自由に本を作る出版社「夜明けの猫」の代表として、文学の本質を守りながら多様な形の本を生み出している。 ソウル永登浦区で、本を介して人々の絆を深める24時間営業の独立書店「セゴ書林」も運営している。
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本屋のパンセ 定有堂書店で考えたこと|奈良敏行 三砂慶明編
¥2,420
定有堂書店が発行している月刊ミニコミ誌『音信不通 本のビオトープ』に掲載された奈良敏行さんのエッセイに、書き下ろしの原稿を加え編者・三砂慶明氏が再構成。 1980年に鳥取で、創業された定有堂書店。2023年に閉店するまで、「本を並べること」「読書会をすること」「ミニコミ誌をつくること」の3つを柱に、43年間営業を続け、その独自の選書と取り組みが全国各地の書店員に注目され、書店員の訪問が絶えないことから「書店員の聖地」とも呼ばれました。 店を閉じた現在もミニコミ誌やウェブでの発信は続けられています。 定有堂は、本屋が詣でる本屋だった。鳥取まで訪ねていき、奈良さんからふっと宙に放たれて光ることばに、支えられた本屋は自分だけではないはずだ。オブジェが吊られた定有堂の店内を思い出しながら本書を読み、奈良さんのことばを受け継いで実践を続けようという決心が、青空のようにひらけた。 NUMABOOKS/本屋B&B・内沼晋太郎 本が好き、という〈初発衝動〉から奈良さんは店を始めた。本を並べ、ミニコミを出し、読書会をして、対話と思索を続けた。時流に遅れながら外界につながり、終わりはまた始まりになった。時空を歪めた奈良さんは、店を閉めてもまだ本屋でいる。 市場の古本屋ウララ・宇田智子 本を読むことの先に、本の中のような人生は扉を開いていなかった。とすると本そのものを目的として生きるしかない。本を読むのでもない書くのでもない、本を売るという人生がそこにあった。読むことや書くことは、あまりに一つの人格のもとに緊縛性が強く行き止まりだった。本を売るという人格が、解けなかった人生の問いを一挙に明快なものにしてくれた。(本書「本屋を生きる」より) ■奈良敏行 1984年生まれ。1972年早稲田大学第一文学部卒。 1980年鳥取にて、定有堂書店を開業。著書に『町の本屋という物語 定有堂書店書店の43年』(作品社)、共著書に『街の本屋はねむらない』、三砂慶明編『本屋という仕事』(世界思想社)など。 ■三砂慶明 1982年生まれ。「読書室」主宰。本の執筆、企画、編集、書評を手掛ける。立ち上げから参加した梅田蔦屋書店を経て、TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISE勤務。 著書に『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)、編著書に『本屋という仕事』、奈良敏行著『町の本屋という物語 定有堂書店書店の43年』がある。
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本をともす|葉々社 小谷輝之
¥2,200
東京の梅屋敷駅近くにある本屋さん葉々社の店主、小谷輝之さんの開業してからのこれまでの本屋さんのしごとの記録です。これから本屋さんをはじめたい、という方にも積極的にノウハウを教えている小谷さんならではの視点で、具体的なことまで詳らかに綴っています。 二〇二二年四月の開店以来、早いもので三年という時間が経過した。毎日、決めた時間に店を開けて、夜が訪れると店を閉める。単純な日々の繰り返しのようでいて、実際はそうではなく、毎日何かが発生する。バタバタするときもしょっちゅうある。 店を開けたあとはお客さんを待つ。基本的にはただ待つ。考えれば出版社に勤務していたときも待つ仕事が多かった。著者から原稿を、カメラマンから写真を、外に撮影に行けば、雲に隠れた太陽がふたたび顔を出すまで待つこともあった。だからなのか、待つことは嫌いではない。 二十五年の会社員生活を経て開業した葉々社は、本屋と出版社を兼務している。本を売りながら、本を作ってもいる。ふたつの出版社に所属していた頃は、仕事が忙しすぎて、自分自身がどんな仕事に向いているのか、真剣に考えたことはなかったように思う。これまでずっと雑誌や書籍の編集に携わってきたのだが、営業の仕事にはいちども就いてこなかった。本屋の仕事を始めてみて、自分はもしかすると営業に向いていたのではないかと感じている。リアルな場所としての本屋、イベント出店、オンラインストアをはじめ、毎日いろんなお客さんとのやりとりがある。本の話を聞いたり、仕事上の悩みについて相談を受けたり、日々、さまざまな年代のお客さんの人生に少しだけ触れている。まだ、三年程度しか本屋の仕事をしていないけれど、五十歳にしてたどり着いたこの職業は、天職なのかもしれない。いまはそう思っている。それほどまでに本屋は楽しいし、やりがいもある。 本書は、私が葉々社を開業するまでと、開業してからの記録である。毎日、どんなことを考えながら本屋の仕事を継続してきたのか、また、目の前に立ちふさがる課題に対して、どう向き合ってきたのかについて、具体的な数字を示しつつ振り返っている。 本屋が好きな人、本がないと生きていけない人たちのことを想像しながら原稿を書いた。本書をきっかけにして、全国各地に小さな本屋がもっと増えていくことを願っている。